平屋|新築|岬の家
紀伊半島南部の岬にある林に囲まれたオープンスペースが敷地です。太平洋のパノラマを望む公園に隣接し、風光明媚な環境であることや温暖な気候、津波の心配が無いことなどの理由で、過疎化する地方の中でも少しずつ若い家族も増えているエリアです。クライアントは、音楽を愛する若いご夫婦と小さなお子様2人。
台風から家を守ってくれる樹を切らないこととできるだけ土地を傷めないようにしようということから計画はスタートしました。木々を残すことは、道路からの進入経路と配置計画を慎重に検討することで可能となり、基礎工事は、木造構造壁をバランス良く配置してその下だけにコンクリート基礎を施工し、その他を石場建てとしました。その結果、コンクリート基礎は、床面積の約30%となり、掘削面積とコンクリート量を大幅に減少させ、床下のメンテナンスも容易にしたサスティビナルな工法となっています。
構造、造作共全て地元の紀州材の桧と杉を使用し、梁には杉の太鼓梁を掛け、古民家空間の様相を再編することを試みました。それらは、都市から若い大工志望の学生や見習いを受け入れたりしながら、林業の継続や技術の伝承を試行している地元工務店の姿勢を設計に反映させたものでもあります。
平屋の建築を林に沿った形にデザインし、それを北側の木々の下に入りこむように配置することにより出来た家と南側の林との間を屋外ステージ(多目的スペース)として提案しました。竣工後の初夏のある日、近親者の方を招いて、こけら落としのミニライブがご夫妻により催されました。客席となったデッキスペースに座り、木々の緑を背景にご夫妻の演奏をみんなで聴きました。隣接する公園にたまたま来られていた方々も公園のベンチに座り、海を眺めながら演奏を聴いておられました。今後は、友人を集めてのライブなども計画され、将来的には2人の子供たちもその輪に加わるかもしれません。高齢化が進むこのエリアにおいて、このような開かれた場が地域の住人の生活に日常とは少し違う楽しみを与えてくれることを期待しています。
建築場所:和歌山県
敷地面積:7602.53㎡
建築面積: 148.64㎡
延床面積: 148.64㎡
構 造:木造
構造設計:片岡構造
施 工:清水工務店
写 真:鈴木研一
第4回きのくに建築賞紀州材賞受賞
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一級建築士事務所 ナカヒラアーキテクツ